フッ素は歯にどんな効果があるのか?と聞かれると、虫歯予防に効果があるということは良く世間に知られています。
では、なぜフッ素は虫歯予防に効果があるのでしょうか?またフッ素には正しい使い方があることを知っているでしょうか。
この記事を読んでいる方は「虫歯ができやすい」、「虫歯を予防したいがどうしたらいいかわからない‥」など、口の中に何らかの悩みを抱えている人がほとんどだと思います。
しかしフッ素の正しい知識と理解がなければ、効果を最大限に活かすことも、虫歯を予防することもできません。
今回は虫歯予防に欠かせないフッ素の効果、正しい使い方をできる限り詳しく解説していきます。歯科医から正しい知識を得て理解することはとても大切なことです。
普段使っている歯磨き粉をいかに”なんとなく”使っていたかがわかると思います。それでは解説していきます。
目次
そもそも”フッ素”って何?
そもそもフッ素とは何でしょうか.フッ素とは元素名(元素記号F)です。土の中、水の中に常に存在していて、肉や野菜、お茶などのほとんどの食品に微量ですが含まれています。
フッ素は”フッ素のみ”で存在することがほとんど無いため、普段私たちの周りにあるものは水などに溶けることで、正確には全て「フッ化物」と呼びます。
「食べ物から摂取できるなら、食事をするたびに虫歯予防ができてる?」と思う人も中にはいるかもしれません。しかし、食べ物から摂取するだけでは、量が十分ではないため、虫歯を予防するということに関してはほとんど意味が無いと思ってください。
後に解説する、フッ素入りの歯磨き粉を利用する方法や、歯科医院でフッ素を塗布してもらう方が断然効果があります。
世間の誤解?フッ素の体への影響とは
フッ素が体にとって悪影響と言われることが少なくありません。
これについて先に結論から言ってしまうと、フッ素はかなりの量を過剰に摂取すると、中毒症状(吐き気や腹痛など)があらわれますが、普段使う量では全く気にしなくて良いということです。
市販されている、歯磨き粉や洗口液に含まれているフッ素の量はごく微量で、中毒症状があらわれるには、相当たくさんの量を飲み込まなくてはいけません。
例えば歯磨き粉のチューブや、洗口液を何十人分も一度に飲み込めば中毒症状が起きるかもしれませんが、普段使うにはまず考えなくて良いです。安心して使ってください。
正しいフッ素の効果を知るために必須!虫歯になる”過程”を知る
フッ素の効果を理解するために必要な知識ですので、虫歯になる過程をここで簡単に解説していきます。口の中には約700種類の細菌が住んでいます。これらはいわゆる”悪の根源”です。
それらの中で虫歯をつくることが得意な菌(ミュータンス菌といいます)が、食べ物の糖を元にして、プラーク(歯垢)と歯を溶かす”酸”をつくりだします。
その酸によって歯の成分が徐々につば” 唾液中”に溶け出していきます。(脱灰:だっかい という現象)これが虫歯の始まりです。
もし虫歯の原因についてもっと知りたいかたは、こちらの記事誰もが間違っている!?本当の虫歯(う蝕)の原因と予防法を完全網羅を参考に。
脱灰され続ければ、虫歯はどんどん進行していってしまいます。歯を守るために、歯が溶け出す脱灰を阻止しなければなりません。
どのようにするかというと、一度溶け出した歯の成分(カルシウムイオンやリン酸イオン)を唾液の働きなどにより、歯の表面に再び戻していきます(再石灰化:さいせっかいか という現象)。
虫歯にならないためにはこのバランスが大切で、これさえ崩れなければ虫歯になることはありません。
虫歯を予防するために大切な3つの効果
虫歯予防における、フッ化物の効果はいくつかありますが、主に3つの方法で虫歯から歯を守っています。
- 虫歯菌が出す酸に強くなる効果
- 虫歯菌を弱らせる効果
- 再石灰化を助ける効果
の3つです。具体的に何が違うかというと、それぞれに含まれている濃度が違います。また子供にフッ素を使う場合は、吐き出しやうがいができるかどうかでも選択が変わってきます。
また、これらを併用をしても全く問題はないです。それぞれを併用することで、より高い虫歯予防効果が得ることができます。それぞれのフッ素の使用方法、適齢期、メリットを理解してフッ素の効果を最大限に活かしてください。
それでは、それぞれをわかりやすく解説していきます。
予防効果 その1:虫歯菌の出す酸に強くなる効果
フッ素は歯の一番外側、表面の最も硬い部分”エナメル質”という部分に取り込まれます。フッ素が取り込まれることで、エナメル質の中の主成分の構造(ハイドロキシアパタイト)が安定し、歯の質が丈夫(フルオロアパタイト)になります。
これによって「酸に溶けにくい丈夫な歯」が作られます。 上で解説したことを、図で表すと下のようになります。これは、脱灰(だっかい)と再石灰化(さいせっかいか)を表した図です。
食事をしなければ、口の中は中性で(グラフでいう上)、酸性度が低い状態です。しかし食事をして糖を摂取することで、すぐに酸性度が高くなります(グラフでいう下)。
そして、”歯の表面が溶け出す境界”を越えると歯が溶ける、脱灰(だっかい)が起き始めます。 しかしフッ素の効果で、脱灰が起きにくくなり歯が溶け出す境界までは到達しにくくなります。
予防効果 その2:虫歯菌を”弱らせる”効果
プラーク中の細菌はエサとなる糖を好みます。細菌が糖を取り込むことで、それらを分解しエネルギーを作り出すことができるからです。
対して、フッ素は細菌の糖を分解するための”酵素”の働きを邪魔する性質があります。これにより菌の活動は弱まり、結果的に口の中で酸がつくられにくい環境になるのです。
予防効果 その3:再石灰化(さいせっかいか)を助ける効果
食事をしていないとき、歯に付着したプラーク(歯垢)は中性に保たれていますが食事をすることで、糖を元に歯を溶かす”酸”を作りだします。
その後、酸性に傾き脱灰が起きた口の中は、唾液の働きによって徐々に中和されていくと説明しました(再石灰化:さいせっかいか)
この脱灰されている時間が長ければ長いほど、中和する再石灰化(さいせっかいか)の力が弱ければ弱いほど虫歯のリスクがとても高くなります。 フッ素にはこの再石灰化(さいせっかいか)を強める作用があります。
脱灰によって溶け出した歯の成分を唾液が戻そうとするのをフッ素が助けるイメージです。
虫歯を予防するために大切な3つの効果について解説しましたが、これらの効果は特に子供の歯に塗布することで効果があるというイメージがあるかもしれません。
しかし、実はフッ素は年齢関係なく効果があります。年齢が上がるにつれ、下の図のように歯の根元の虫歯が多くなるのですが
このような虫歯を予防したり、その他の場所の虫歯を防ぐためには、フッ素はとても有効なので大人も積極的に使ってください。
効果を最大限活かすための3つの使用法
次に”フッ素の使用法”を解説していきます。フッ素の使用法も大きく分けて3つあります。
- フッ素が入っている歯磨き粉を使用する方法
- 歯科医院で歯にフッ素を塗ってもらう方法
- フッ素が入った洗口剤を使う方法
です。具体的に何が違うかというと、それぞれにふくまれている濃度が違います。また子供にフッ素を使う場合は、吐き出しやうがいができるかどうかでも選択が変わってきます。
また、併用をしても全く問題ないです。むしろそれぞれを併用することで、より高い虫歯予防効果が得ることができます。
それぞれのフッ素の使用方法、適齢期、メリットを理解してフッ素の効果を最大限に活かしてください。
それでは使用法を解説します。
知らないうちにしている!?”フッ素入りの歯磨き粉”を使う方法
最も気軽にできる虫歯予防は?と聞かれたときに、歯医者は「フッ素入りの歯磨き粉を使って毎日歯磨きをすること」と答えます。
この方法は、日常の歯磨き粉を使って簡単に虫歯予防をすることができ、とても手軽なことから、全世界で最も普及しているフッ素の使用方法です。
対象年齢は、吐き出しができるようになる3歳頃から全ての年齢で使用することができます。吐き出しがもしできない場合、あまり見慣れないですが、泡状の歯磨き粉やスプレータイプのものも一応あります。
1日の使用回数が多ければ多いほど、プラーク中のフッ素の濃度が高くなることがわかっているので、1日2回以上フッ素配合の歯磨き粉を使うのがポイントです。
ほとんどの人が知らない、正しい歯磨き粉の量
フッ素の量は少なすぎると効果が不十分で、年齢に合わせた量を使うのがベストです。3歳〜6歳くらいではグリンピースサイズが最も適した量といえます。ちょうど子供用の歯ブラシの半分くらいです。
ある一定量からどれだけ多く塗布しても、効果が上がらないのであまり多くは塗布しないようにしましょう。
6歳以上になると、永久歯が生え始める時期になり、フッ素症になる心配がなくなるために量を少し多めにします。大人用の歯ブラシの植毛部分の約半分くらいが適量です。
知らなければ全て無意味!?意外と知らないうがいの”回数”
まずフッ素の効果を最大限に活かす方法の大前提として、フッ素は口の中に留まる時間が長ければ長いほど効果があります。
そして、フッ素入りの歯磨き粉を使う際にあまり知られていないこととして、うがいの「回数」に気をつけることがあげられます。
歯磨きの後のうがいの回数(時間、水の量)が多ければ多いほど、歯の表面に残っているフッ素を洗い流してしまい、口の中のフッ素濃度も低くなってしまうことがわかっています。
うがいの回数は最高でも“2回”までを必ず守ってください。
また、濃度を保つためという意味でも、口の中で長い時間すすいでいるような「ガラガラうがい」は止めたほうが良いです。 歯磨きの後は、すぐに飲食をさけることも濃度を保つためには大切なことです。
歯磨き直後に飲み物を飲んだり、ガムを噛んだりすると、唾液中のフッ素が早く失われてしまうからです。
フッ素入り歯磨き剤の見分け方
歯磨き粉を購入するとき裏側に、「モノフルオロリン酸ナトリウム」や「フッ化ナトリウム」と記載されているかを確認しましょう。(現在、ほとんどの歯磨き粉に含まれていますが)家にあるものも含めて成分表が記載されていますので、是非確かめてみてください。
高濃度を扱う”歯科医院でのフッ化物塗布”
歯科医院でフッ化物を塗布してもらう方法です。定期検診で歯医者を訪れている人はわかると思いますが、3ヶ月〜4ヶ月に一回程度行うことが多いです。
この方法は最も高い濃度を使用するため、歯科医師や歯科衛生士の施術が必要となります。
対象年齢は歯の生え始めた小児以上の年齢です。この時期は特に虫歯になりやすいため、積極的に行ってください。
子供の歯(乳歯)が歯が生え始めた後の早い時期(1歳くらい〜)や大人の歯(永久歯)が生え始める時期(5歳くらい〜)が適年齢ですが、 全て永久歯の場合でも効果があることから、どの年齢でも対象となります。
3、4ヶ月に一回、定期的に歯医者に通っている人は、フッ素を歯に塗るべきです。
フッ素が入った”洗口剤”を使う方法
これは、市販されているフッ素が入った洗口剤でブクブクうがいをすることで、虫歯予防をする方法です。歯医者の中ではフッ化物洗口(ふっかぶつせんこう)と呼ばれていて、毎日1回行う方法と・週に1回行う方法があります。
先口法のメリットとして、歯ブラシが届きにくい場所(虫歯になりやすい場所)の、奥歯の溝や、歯と歯の間にもフッ素が行き届きます。
虫歯になりやすい場所が知りたければ、こちらの記事100%虫歯を予防するための5つの方法を歯医者が徹底解説を参考に。
対象年齢はブクブクうがいができるようになる4歳頃から、全年齢で使用できます。4歳未満でもうがいが上手にできれば、行うことができます。
小さい年齢から始めることはメリットが多いです。早い子だと4歳後半で、一番奥に大きな永久歯が生え始めます(第一大臼歯:だいいちだいきゅうし、6歳臼歯:ろくさいきゅうし などと呼ばれます) 。
6歳臼歯は、特に生え始めはとても虫歯になりやすいのが特徴です。ただ、フッ素を低年齢から継続的に使っていれば虫歯になりにくい、強い歯にすることができます。
しかしフッ化物洗口法は、ついつい忘れがちになってしまうことが欠点です。対処法として、
- 決まった時間(夜寝る前)などに行うように心がける
- 夜寝る前の歯磨きを行った後、一緒にしてしまう
などを参考にしてください。
気になるフッ素塗布の費用
フッ素塗布の料金は歯医者によって違います。数百円〜1000円で値段が設定されていることもありますが、子供の場合は特に、3〜4ヶ月の定期検診の際一緒にフッ素を塗布してもらえることがほとんどのようです。
乳歯から永久歯への生え変わりの時期は、特に虫歯になりやすくフッ素は有効なので、定期的なチェックとフッ素塗布を習慣にしたほうが良いですね。
まとめ
今回はフッ素の効果と使い方を詳しく解説してきました。今回の記事をまとめると、
- フッ素はどこにでも存在している。単体で存在することはほとんどなく私たちが使っているのはフッ化物。
- フッ素は体に害があるといわれていますが、中毒が現れる量は相当な量が必要。
フッ素には、
- 虫歯菌が出す酸に歯が強くなる効果
- 虫歯菌を弱らせる効果
- 歯の再石灰化を助ける効果
によって虫歯を予防しています。
また、フッ素を塗布する方法として、
- 数ヶ月に一度、歯科医院でフッ素を塗布する方法
- 歯磨き粉でに含まれているフッ素で毎日塗布する方法
- フッ素が入った洗口剤を使う方法
があります。それぞれの正しい使い方を守ることで初めて効果が最大限に発揮されます。
フッ素は1日,2日塗ったからといって虫歯を予防できるわけではありません。継続して使用することが一番大切です。
できる人はこれら3つの方法を併用、継続して毎日フッ素入りの歯磨粉を使いながら、さらに3〜4ヶ月に一度、歯科医院でも塗布してもらうことが最も効果が高くおすすめです。
フッ素の効果を最大限活かすことで、一生虫歯のない生活を願っています。是非この記事に書いてあることを覚えておいてください。
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