歯並びを良くする方法って矯正の装置をつけて歯を動かすことだけではないこと。知っていますか?良く知られている矯正装置は下の画像のようなものですが、
このような装置をつけなくても実は歯並びは良くなります。今回の記事を読みMFT( 口腔筋機能療法)を知ることで、「MFTの必要性」、「どんな人が対象になるのか」を是非知れたらと思います。また、MFTによる「舌のトレーニング」とその効果に対する驚きがきっとあるはずです。
それではさっそくいきましょう。
目次
誰もが認めざるを得ない、MFTの本当の効果とは?
あなたも今まで、以下のような人を一度は見たことがあるはずです。
- 食べ方が汚い
- 食べるときにクチャクチャと音を立てる
- 食べ物をあまり噛まずに飲み込む
- 舌足らずで発音が悪い
これらは一度癖がついてしまうと治すのは大変で、その人にとっては一生の悩みになるはずです。これらの異常を矯正の装置などはいっさい使わず「口を使ったトレーニング」だけで改善していきます。
指導者(歯科医師や歯科衛生士)と一緒にその人に合ったMFTのメニューを作成して、メニューに沿って毎日練習していきます。練習時間は空いた時間に10分〜20分程度行うだけです。
矯正の装置など痛くて邪魔な装置はいっさい使わず、少しの時間を練習にあてて続けていくだけでこれらが治れば、とても価値がある治療法であることがおわかりいただけたでしょうか?
MFTで歯並びも治る!?
実は歯並びが悪くなる原因にも口の周りの機能がとても影響しています。正しい口の動きによって歯が正しい位置へと移動していくのです。では実際にMFTで歯並びが治るケースでどれだけ見た目が良くなるのか見ていきましょう。
上の写真は舌を前に出してしまう癖がある子にMFTのトレーニングをした前と後の写真です。明らかに前歯の隙間が閉じてきているのがわかります。ちなみに矯正の歯につけるような装置などはいっさい使用していません。
これだけは押さえておきたい、MFTの目的5選
先ほどの食べ方が汚かったり、うまく飲み込むことができない。発音が悪いなどは、なぜ起きるのでしょうか。
それは口の周囲の筋肉が弱かったり、うまく動かすことができないと嚥下(飲み込む動作)、咀嚼(食べ物を噛む動作)など普段何気にやっている「当たり前のこと」ができなくなるからです。また舌や唇の悪い癖が、長い間残ってしまっているからです。
逆に早い段階にそれに気付き、それら当たり前のことができるように訓練をしていれば、必ず効果がでてきます。
舌や唇にも正しい”姿勢”がある!?
実は舌や唇にも正しい姿勢があります。まずは、舌と唇の姿勢の正しい位置を知ることがとても大切です。普段何もしていないとき、上下の歯は噛み合わず2〜3㎜の隙間が空いています。そのとき力は入らず唇同士は閉じている状態が理想です。
口の中で正しい舌の位置はどこにあるのでしょうか。
舌の先(舌尖)は上顎のスポットと呼ばれる部分(↑の画像の青い点の部分)に接しています。また、舌の側面は↓のように左右の歯の歯肉付近に、舌全体は上顎にピタッと触れています。
これは、全体の歯に過度な力がかからずに、鼻で呼吸ができ、口の周りの筋肉の圧が安定している状態です。
それでは、MFTが必要な人の間違った姿勢を見ていきましょう。MFTが必要な子供の多くは、何もしていないときに舌などをいろいろな方向に出してしまう癖があります。
これは無意識のうちにやってしまうことなので、本人はまったく自覚がありません。周りの人も気にも留めないことですが口にとってはとても悪い影響が出てきます。これは圧力のバランスが崩れている状態です。
普段何もしていないときに口の周囲に過度な力がかかっていると、歯に筋肉の圧が長い時間かかり続け歯並びにも大きな影響が出ます。
MFTでこれを正すことはとても大切で、多くの人が知らないことです。MFTによって、何もしていないとき「舌や唇が常にリラックスしている状態」を保つこと=口の周りの筋圧のバランスを整えるということです。
間違った食べ方を治せるのはMFTだけ
人は物を食べるときに舌や口の周りの筋肉、顎の運動を同時に使い食塊を形成して飲み込んでいきます。このとき唇や歯は必ず閉じていて、舌の上に食べ物があります。このとき舌を前に出したりはしないはずです。
しかしこの当たり前の動作ができない子供はたくさんいて、早いうちに訓練で治していかないと次のことが起きてきます。
- 食べ物を舌で迎えにいき食べようとする
- 食べ物を噛んでいるときに口が空いている
- 嚥下のときに上下の歯が接触していない
- 舌の上に食物が保持されない
- 飲み込むときに舌を前に出してしまう
これらは舌や口の周りの筋肉が弱かったり、正しい動きができないために起きるのです。これらをMFTで、正しい食べ方へと改善させていきます。
間違った食べ方を正すことができるのはMFTだけと言っても良いくらいです。
知らないと”矯正期間が長くなってしまう”かも
先ほど説明した舌を無意識に出したりする、「異常な癖」は歯並びが悪い患者さんに特に多いことです。それを治さずに歯列矯正をしてしまうと、頬や舌の異常な圧は治療の障害になってしまいます。
このように、せっかく綺麗に並んだ歯も強い力で押し返されることで矯正治療が進まなくなってしまうのです。その結果、治療期間が延びたり、正しく飲み込めないことで食べ物のカスがあちこちに残り、虫歯の原因になります。
虫歯になると一度矯正治療が中断になってしまい、歯についている装置を外して虫歯の治療からしていかなければなりません。
これで歯列矯正中は、口の周りの機能が正常であることは必須であることがわかったと思います。歯並びなどの見た目だけに捉われず、必ずチェックする必要があるのです。
矯正治療後、一番こわい”後戻り”を防ぐ
矯正治療が終わった後、移動した歯は元の位置に戻ろうとします。それを防ぐため、”保定”といって、移動させた位置に固定する期間が必ずあります。しかし”保定”をしていても、異常な唇や舌の力は有害となります。
このように歯列の矯正でせっかく綺麗な歯並びにしても、”後戻り”の原因となります。これでは、高いお金を払って歯並びを綺麗にした意味がないかもしれません。
おわかりの通り、歯列の矯正と同時に必ず口の周りの機能も治す必要があるのです。
舌足らずも治る?
舌を使うことが苦手な子供は「サ行、タ行」が言いづらいことが多いことを覚えておきましょう。これらを放っておくと”舌足らず”になることが多くみられます。
MFTでは、発音にかかせない舌を動かしやすくするような訓練がたくさんあり、聞き取りづらい発音を良くして正しい発音で喋ることができるようにサポートしていきます。
MFTが必要になるかもしれないチェック項目
MFTが必要になる可能性が高い、”わかりやすい例”がいくつかあります。ここではそれらをまとめたので解説していきます。もし、あなたの周りにこんな人がいたらMFTが必要になってくる可能性が高いので、一緒にチェックしてみてください。
無意識に舌を出してしまう、舌突出癖【ぜつとっしゅつへき】
無意識のうちに舌を歯と歯の間から出そうとする癖のことを言います。例えば子供の歯が早くに抜け落ちてしまったり、歯と歯の間に隙間があるとそこから舌を出してしまう癖がつくことがあります。結果として開口(前歯が開いた噛み合わせ)になってしまったり、前歯が傾斜してしまったりします。↓の画像
この子は前歯が開いてしまった原因が「舌を前に出す癖」があったためであり、MFTによって「舌を出す癖」を改善させるだけで、これだけ劇的にかわることもあります。
飲み込む動作の異常、異常嚥下癖【いじょうえんげへき】
異常嚥下癖とは、食べ物を口の中に入れることから、飲み込むまでの過程に異常が見られます。
正しい咀嚼や嚥下(飲み込む動作)をしっかりと区別することは難しいですが、異常な咀嚼や嚥下に共通してみられる項目がいくつかあります。それらは大きく分けて「準備期」と「口腔期」の2つに分けられます。
- 準備期:食べ物を口に取り入れてから、噛み砕いて舌の上に保持するまで
- 口腔期:噛み砕かれた後、舌に保持された食べ物が食道に送られるまで
です。それではそれぞれ説明していきます。
食べたときに起こる準備期【じゅんびき】の異常
正しい場合、食べ物を奥歯で細かく噛み砕き、舌の上に細かくした食塊を乗せて喉の奥に送る準備をします。しかし異常な場合は、
- 舌で食べ物を迎えにいく
- 奥で噛むことをせず前の方で噛み砕く
- 噛み砕いた食塊を舌で後方に送る力が弱く、唇と頬をすぼめるような動作をする
このような動作をして、前で「モソモソ食べる」ような動作をします。
飲み込むときに起こる口腔期【こうくうき】の異常
ここでは、細かく砕いた食塊を舌の力で後方に引いて喉の奥に送り込むのですが、異常な場合次のような動作をすることが特徴です。
- 飲み込むときに舌が前方に突出し、歯を越えて唇と接触する
- 飲み込むときに、上下の奥歯の接触が無く後ろ側に落とし込むようにする
その他にも「異常な咀嚼や嚥下をする子供にみられる傾向」をいくつかあげておきます。
- 食事の姿勢が悪い
- クチャクチャと音を立てて食べる
- 咀嚼回数が少ない
- 何回も飲み込む動作をする
- 固いものや薬などを嫌う
常に口で呼吸してしまう、口呼吸【こうこきゅう】
いわゆる口を常にポカンと開けている状態です。
このような場合アレルギーや鼻炎などで、普段鼻で呼吸をせずに口で呼吸をしてしまっている状態です。その結果、口の中が乾燥して虫歯になりやすくなる他、唇と舌の姿勢が悪くなり歯列に対して悪い影響が出てきてしまいます。
子供は誰もがしてしまう指しゃぶり
指しゃぶりはほとんどの子供にみられますが長い間残っていると前歯が開いた状態になる、「開口」になってしまいます。MFTを行い舌の機能や唇の姿勢位の問題を無くし、自然と指しゃぶりの癖を改善することで効率良く治療することができます。
誰にでもある舌小帯【ぜつしょうたい】の異常
舌小帯とは上の画像のこの部分です。この部分に短かかったり異常がある場合は舌を伸ばすことが難しく、発音や嚥下にも影響を与えます。舌を伸ばそうとしても↓の画像のようになってしまうのが特徴です。
MFTによって舌小帯を伸ばし動きを良くします。またそれでも難しい場合は、手術を行って短くすることになります。
ただし、手術をするからといって舌の訓練をしなくて良い訳ではありません。理由は舌を動かしていないと治療後に「瘢痕:はんこん」といって固まってしまうため、手術をする場合でもMFTを使った舌の訓練を並行して必ず行います。
舌が大きい
一般的な舌の大きさよりも舌が大きい場合、歯並びに影響がでている場合が多く、MFTによる訓練の対象となります。舌が大きい子は、何もしていないとき「舌の位置が前にあったり、筋肉が緩んでいること」が多いため、MFTのトレーニングによって舌の筋肉をつけることで舌を引き締めていきます。
それ以外の場合は舌を小さくする手術が必要になりますが、こちらもMFTを使った舌の訓練を並行して行います。
MFTのレッスン実践編
レッスンの実践編では、MFTの基本となるトレーニングを少し紹介します。MFTのトレーニングを進めていくにつれて難易度は上がっていきますが、まずは舌の正しい位置や感覚を覚えることから始めなければなりません。正しい舌の姿勢を理解し、無意識にできることで始めて次のレッスンに進むことができます。
最初は次の2つのレッスンを行ってみてください。
【全ての基本】舌の位置を覚える「スポットポジション」
先ほど舌の正しい姿勢や嚥下を行う際は、舌はスポットにあると解説しました。スポットポジションはこの場所を覚えるトレーニングです。
- 姿勢を良くして鏡を見ながら、口を大きく開けます。
- スティックなどを使ってスポットの位置にあてます。
- ゆっくり5つ数え、感覚でスポットの位置を覚えます。
- 何もない状態でスポットに舌の先をあてます。
- ゆっくり5つ数えます。
まずはこの順番で5回行います。何度も行っていると舌の先がスポットにあることに慣れてくるでしょう。
舌を上げる感覚を覚えるための「ポッピング」
正しく食べ物を飲み込むためには、舌は上顎に押しつけられるような動きをすると解説しました。ポッピングはこの感覚を養うための基本的なトレーニングになります。また舌小帯をしっかり伸ばす練習です。
- 姿勢を良くして鏡を見ながら、舌全体を上に吸いつけます。
- ゆっくり口を大きく開けます。
- 舌小帯をいっぱいに伸ばしてから「ポンッ」と音を立てます。
音を出すだけではなく、力強く舌を押し上げて舌小帯をしっかりと伸ばすことを意識しましょう。まずはこれを10回ほど行ってみましょう。
まとめ
今回はMFTとはどんなものか。その目的とどんな人が対象になるのかを詳しく解説してきましたがいかがだったでしょうか?大切なことは、歯並びなどの「見た目」にアプローチするのが大切なのではなく、「口の周りの機能」にアプローチしていきます。
口の周りの機能に異常がある人は、一見はわかりにくいのが特徴です。そしてその「機能」が原因で歯並びが悪くなっている人が、正しい知識と方法でレッスンを続けていれば必ず良い結果がでてきます。
この記事を読んでMFTが必要なのか、必要ではないのかを必ず見極め、レッスンを始めるきっかけになればと思います。
MFTは単独で行うこともありますが、歯並びの矯正治療と併用して行うことも多い治療法です。なぜなら、歯列矯正で見た目の歯の並びは綺麗になるかもしれませんが、機能的な問題は決して改善することはできないからです。
MFTの知識を深めて、これから実践していくのであれば必ずこちらの記事で解説した知らないと意味がない?MFTでトレーニングする際に注意する9つのことを必ず守ってください。
今回は以上です。
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